2025年振り返り

2025年も残り数日。
ざっくりと振り返って、来年に向けて整理をしておこうと思います。

#時系列の振り返り

#1月

正月早々から、親友たちと計画していた旅行が、親友の体調不良で流れるなど、かなり幸先の悪いスタートでした。
また、(詳細はここでは明かせないものの) 人間関係で動揺 することも多く、精神的に不安定な状態が続きました。

そんわけで、下旬は タイ&ラオスに逃避旅行 をしていました。

結果的に言うと、 この旅には大変意味があった と思います。

元々、タイを選んだのは、旅の本で色々見かけてずっと憧れがあったのが大きいですが、もう一つの決定的な理由として、
タイやラオスは 社会が強力な宗教的価値観に支えられている仏教国 という点がありました。

というのもこの頃、 孤独について考えることが多く なっていて、孤独について色々な本を読み込んでいました。
そこで読んだ『孤独と不安のレッスン』[1] のなかには、
以下のような記述があります。(pp.82-83)

(前略, 欧米でもキリスト教に関心がない人が増えてきたことで) 結果、彼らは、日本人が60年も前から取り組んでいる問題、「強力な神がいないまま、この中途半端に壊れた共同体の中でどう生きよう?」ということにやっとぶち当たり始めたのです。

もちろん、単純な答えは、たくさんあります。
強力な神をもう一度作る。強力な共同体をもう一度作る。両方ともやっているのが、イラク戦争をしかけたアメリカですね。キリスト教原理主義を掲げ、強力な国家を目指す。アメリカ国民は、よっぽど不安なんですね。あんまり不安だから、二つないとやっていけないんです。

そして、 日本は「強力な神」(天皇)と「強力な共同体」(ムラ)のいずれも不完全なまま機能しており、「中途半端に壊れた共同体」になっている 、と主張します。
私にとって、 2024年の米国での留学期間の体験からも、この「中途半端に壊れた共同体」の問題は、非常にリアルに感じられました。そして、自分が感じている苦しみの背景がここにあるのではないかとも考え始めました。

では、 東アジア的な「強力な神」の世界観とはどんなものか? それを理解すべく、強い仏教社会への旅に至りました。

タイとの国境近くのラオスの街、フアイサーイから、ラオスのルアンパバーンまで行くスローボートで出会った アルゼンチン人のおじさん2人組からは、旅をする自由な生き方をずいぶん教わりました

結果的には、 宗教のような"虚構"は、それを皆が信じることができるうちには強い力を持っていて、実際に人を幸せにする のだ、ということを学びました。

他方で、強力な自然科学の影響下にあり、政教分離が前提のわが国の若者が、 これから仏教や神道をよりどころにするのは、なかなか難しい ことだろうなとも思いました。
神は死んだ、ということなのかもしれません。

では、 神なき後の拠り所は何か? それはおそらく、アートなのだろうと思います。
そこに爪痕を残したいと、強く思います。
経典はバズらないけれど、Adoは伸びた。そんなことを考える1月でした。

#2月

2月は、 復学が迫っていることを改めて認識 し、不安が募り、
あまり活動的にはなれませんでした。

自分の個人Discordサーバに、自分の個人Scrapboxを読み込んだLLMを導入して遊んだりはしていました。

読書をしていた時間が多かったです。

復学後に先駆けて、所属研究室の催しなどにも参加しました。
現役生の研究発表が色々あったのですが、あまり質問が多くなく、これまで所属してきたコミュニティ(たとえばSGGや未踏ジュニア)と比べてしまい、少し残念に思いました。
正直、ちょっと 研究室にハマっていない 体感がありました。

#3月

3月は、同時に大学に入学した人たちの多くが卒業しました。

セキュリティ・ミニキャンプ大阪ではチューターを務めました。

たのしかったです。いつかは講師とかもやってみたい気がしますが、自分は特定の技術のexpertになるタイプではないので、あまり向いていないかもしれません。

月末には昨年に続き、F1の日本GPに行きました。
TSUのRed Bullへの電撃昇進は衝撃でしたね……

レザークラフトに入門 したのもこの頃です。

#4月

いよいよ 復学 しました。
授業も研究も始まりました。

また、IPAの春季試験で、ネットワークスペシャリストの試験を受験しました。(7月に、合格が発表されました)

運動しようと思い立ち、つくば市内のプールに通い始めました。

#5月

大学生のやり方を思い出しながら、趣味としては クレパスでのお絵描き に精を出した月でした。

大企業の面談 も体験としては受けてみて、「こういう世界もあるのだな」と思いました。

3月に親友たちと出かけた際に、就職について迷っていると相談した際、
「とりあえずアプリを入れて動いてみたらどうか」「話してみて分かる事もある」との助言から、一般の就活アプリを入れて、しばらく様子を見ていました。 色々なオファーが来て、嫌気がさしていた時期でもあります。

当時の日記には、以下のように書かれています。

<某大企業>の面談に行った。あまり可能性はないが、「こういうキャリアも今からなら選択可能なのだなぁ」という可能性がその場にある感じが妙にキツい。

ものづくりとしては、FreeCADを本格的に触るようになったのがこの頃です.
ずっとFusion360を使っていたのですが、就職すると学生ライセンスが切れるので、今のうちに慣れておこうという判断でした。

結果的にこれは功を奏して、 もう最近は全部FreeCADで作っています
MakerWorld にもFreeCADで設計したものを投稿しています。

#6月

某社でのインターン(的なもの)に多くの時間を費やしました。
すごく楽しかったし、短期間で多めのタスクを担う感じだったので物理的にも忙しかったです。
このように充実した時間が過ごせていると、 仕事の時間以外でも仕事のことをしたくなっちゃう のが、自分の(会社員をやるには)課題点だと思いました。
時間で切り替えって、難しいですよね。

ほかには、TOEICの試験を受けました。スコアはまずまず。リスニング試験中に関係ないことを考えてしまって、聞き逃した問題が多かったのが悔やまれます。

また、NT金沢を目標とした金沢旅行にも行きました。
ずっと訪れたかった 石川県立図書館 にも行けてよかったです。

#7月

あまり研究も手につかず、何がなんだかよくわからないまま時間が過ぎていった月でした。

のちに来年の4月から就職することになる会社でのインターンも経験していました。
1 on 1 をかなり密に組んでもらえて、キャリアに関する考え方には変化があったと思います。

研究室の合宿のようなものもありましたが、正直あまり楽しめませんでした。

研究室内に友人と呼べる人がいないので、やむなし。

研究室の中で、研究に熱があって面白い先輩ほど、旅行には来ていなくて、残念でした。
でも、あれだけ人がいるのに、「面白い人がいなかった」とはあまり言いたくないですね。
私がおもしろがりきれなかっただけだと思います。

#8月

帰省しました。長距離ドライブ、たのしい。
ついでに、大阪の日本橋を久々にみに行ったり、県内では伊吹山, 能登川図書館などに行きました。

研究がちょっと進んだ月でもありました。

#9月

7日に「手が滑った」せいでフライトが取れてしまったので、9日にエジプトへ出発しました。

カイロでは詐欺ガイドの洗礼を受けつつも、ギザの三大ピラミッドやエジプト考古学博物館を堪能しました。

その後、シナイ半島のダハブへ移動し、美しい海や、良いホステル、最高の友人たちとの出会いに恵まれ、精神的には大変充実した時間を過ごしました。

ダハブは本当に素晴らしい場所で、次はダイビングをやりに行きたいと思っています。

エジプトから日本への帰り道には、 1月に続いて、再びバンコク を訪れました。
バンコクでもホステルに2泊しましたが、こちらはかなり年上の人たちが多く、あまり馴染めませんでした。

国内でもそうですが、国際的な人間関係では特に、 年齢差があるとコミュニケーションは格段に難しくなる と感じました。

以下、当時の日記からの引用です。

結局、年齢は結構なmatterだと思う。おれがダハブのホステルで馴染めたのも、年齢のおかげかもしれなくて、もしそうなら、おれがもし人生で困ってまたあのホステルに戻っても、同じようには馴染めないのかもしれないと思って少し悲しくなった。
つくづく、青春は取り戻せない。

バンコクからは直接関空に戻り、免許の更新を滋賀でやってから、つくばに帰りました。
とりあえず、緑の免許証を無事故のまま返し、青に更新できてよかったです。
このままゴールドまで最短経路で進みたいものです。

#10月

1日には 内定式 がありました。こちらも、当時の日記から引用します。

やはりこういう日は苦手だ。行きの電車では、スーツの大学生がワックスでギラギラさせた髪を頭に乗せて、しかしいつも通りの背格好でスマホを触っている。似つかわしくない。
帰りの駅では、一様に黒い大学生が、表面的な笑みを浮かべて「人脈」「交流」に励んでいる。軽薄で、不自然だ。
一年前、親友が内定式に参加した日は、彼女と一緒に渋谷でダラダラしたっけか。あの日から、結局こういう進路になるなんて思いもよらなかったな、などということを考えながら、つくば号で帰ってきた。

それから、誕生日である10月5日、Maker Faire Tokyo 2025にも行きました。最近のMaker Faire Tokyoは、私にとっては挨拶回りになっていて、あまりうまく刺激が受けられない感じがしています。

そうでありながら、出展する側で刺激を届ける側に回れていない自分に嫌気 が差しました。

これは、「おれもものづくりをするぞ」という モチベよりも劣等感が勝っている という意味で、よくない傾向です。

本当は 比較優位よりも内的な幸福を追い求めるべき であるところ、派手さに誤魔化されて最適化すべき目的関数を誤っているといえるでしょう。

そんなわけで、以下のようなことを考えました。日記から。

23歳のテーマは「実」で行こうと思います。虚実の「実」の方。見た目や品質よりも、実際に何を作ったかという成果物の量の充実にこだわる、ということと、シューショクするので、改めて「現実の問題に向き合う」ということを実践していかねばならない、という覚悟と。

10月中旬からは、やや研究の進み方に違和感を持ち始めました。

「何かがおかしくて、困っています」「衝動でエジプトに行っておいていうのもアレなんですが、進捗的に焦ってます」みたいな話をしたら、「きみは大丈夫でしょ」「まだ焦るところじゃない」などと言われた。教員側がそういうこと言うの、どうなん?(否定ではなく、真の疑問)と思ったので、ことばにならない「(笑)」みたいな音で返事した。

こういう不安感が体にも影響を及ぼし始め、割と頭痛が頻発するようになりました。

#11月

無でした。今から考えれば、頭痛は前兆だったといえます。

「研究しなければ」と思いながら実際には体が動かなくて着手できなかったり、抑うつだったりした暗黒の月でした。

なんとか授業だけは行き続けられたのはよかったです。

自分は鈍感なので、自分が今どのくらいヤバいかをよく知覚できていなかったため、「おまえはヤバそうである」(要約)と指摘して救い出してくれたつくばの友人たちには本当に感謝しています。

#12月

前半は試験に奔走した月でした。
ついに 司書課程を完走 しました。来年、卒業さえすれば司書資格を取得できそうです。

とはいえ、研究はまるで進まず、精神的にはかなり参っていました。
結局、中旬から医療に頼りながら、なんとか年末を迎えた感じです。

忘年会がいくつかあって、それは楽しかったです。

27日、28日にはSGGの合宿に参加しました。
「物理的に忙しいのは問題ではない。自分が何をやっているかわかっていない状態で前に進むのが苦しいのだ」というようなことが共通認識としてエンコードされてすごく腑落ちしました。

そういえば、ヨシタケシンスケ『思わず考えちゃう』[2] にもこんなエッセイがありました (p.99)。

幸せとは、するべきことがハッキリすること
ていうか、結局、決めたことをやったらやったで、うまくいかなかったりもするんだけれども、こうすればいいんじゃないかなって、自分の中である程度方向が、それこそ覚悟が決まった瞬間が一番、幸せって言われるものに近い心理状態なんじゃないかなって思ったんです。

あれもできるし、これもできるってなったら、全部やんなきゃいけないのかよみたいな感じになってきて、何かその可能性がたくさんあることが苦しみだったんです。僕の場合は。
で、年取ってきて、いろいろ経験を積んで、いや、今からあれは無理だし、これもダメ。なら、俺、結局あれとあれしかできないよな、ってことは、これとこれだけやっとけばいいんだよなって思ったときに、すごく救われました。

SGGの人たちには、「大学生活はいまひとつうまく行かなかった」「来年は自我を取り戻す」と宣言しました。
でも、 宣言だけって、あまり意味ない んですよね。

ギンジはTwitterに書いていた。「俺はもっとがんばれる」と。隆良はツイッターに書いていた。「がんばるがんばるって、それ、何のために?誰のために?」「俺は、自分の人生のために、やることをやる。目的がブレた状態でがんばりすぎたって、そんなの意味がない」と。
瑞月さんは言った。「がんばらなきゃ」と。それだけが真実だと、俺は思った。
もっともっとがんばれる、じゃない。そんな、何も形になっていない時点で自分の努力だけアピールしている場合ではない。何のためにとか、誰のためにとか、そんなこと気にしている場合じゃない。本当の「がんばる」は、インターネットやSNSのどこにも転がっていない。
(『何者』 朝井リョウ 2012. 書誌情報

#人間関係

今年は、 人間関係を今後どんなふうにやっていこうか と考えさせられた年でもありました。

複雑な話は個人が割れがちなので避けますが、わかりやすいのは恋愛や結婚の話題です。

最近、(過去の振る舞いから私からは)「この人はそういう選択をするタイプではなさそうだ」と思っていた人々が、恋人を作ったり、結婚する意思決定に至ったりするケースが増えてきました。

それにつれて、「早く結婚せねば」と焦る人すら周囲には散見されます。
正直なところ、そういう人たちには相当の 危なっかしさ を感じます。

そこで、自分はどうするのか?ということは、日々考えます。

今は 一人でいることの恩恵をかなり享受している (突然エジプトに行ったり)し、そういう意味で 人と一緒にやっていける自信は全然ない(誠実に関係が維持できる気がしない)というのが正直な感想なので、現時点では「いつか結婚したい」とは全く思わない、というのが本音です。

とはいえ、今年を振り返ると、 「寂しさ」的なものに振り回されておかしくなっていた 時は結構あったようにも思われます。

私はよく人に「 恋人は欲しいとは思わない。でも、誰かとぐりとぐらのように生きたい 」と言っています。
元は、『N/A』(年森 瑛. 2022) の中のセリフに強く共感したために言い始めたものです。
しかし この希望は、ずいぶんなエゴだ とも思います。

たとえば、私が高校時代から繰り返し反芻してきた、以下のテクストがあります[3]

イゴイズムをはなれた愛があるかどうか。イゴイズムのある愛には、人と人との間の障壁をわたる事は出來ない。人の上に落ちてくる生存苦の寂寞を癒すことは出來ない。イゴイズムのない愛がないとすれば、人の一生ほど苦しいものはない。
周囲は醜い。自分も醜い。そしてそれを目の当たりに見て生きるのは苦しい。しかも人はそのまま生きることを强いられる。一切を神の仕業とすれば、神の仕業は惡むべき嘲弄だ。
僕はイゴイズムをはなれた愛の存在を疑ふ。(僕自身にも)。僕は時々やりきれないと思ふ事がある。そして最後に神に対する復讎は、自己の生存を失ふ事だと思ふ事がある。僕はどうすればいいのだかわからない。

かたや、『孤独と不安のレッスン』は、こう主張します。:

一人がみじめなんじゃなくて、一人はみじめだと思い込んでいることに、苦しめられているんじゃないかと、僕は思うのです。(p.18)

(前略; 経験の浅い劇作家は、主人公に感情移入し、主人公の都合のいいように動いてくれたり、主人公が活躍できるように犠牲になってくれたりするが、現実ではそんなことはない。)ですから、あなたが愛した人は、家族は、親友は、『何も言わなくても分かってくれるもう一人の自分』ではなく『他者』です。
『他者』である限り、どんなに愛した人でも、プラスとマイナスの両方がある。そう決意することは、『孤独と不安』からは逃げられないと、腹を括ることでもあるのです。
『何も言わなくても分かってくれるもう一人の自分』がどこかにいて、あなたを全面的に受け入れてくれる、という考えを捨てることは、『孤独と不安』と共に生きていくと決心することなのです。 (p.156):

「ぐりとぐら」を考えたとき、 私はシナジーのために共存したくて、互いに(例えば承認の)不足を補う的な相補的共依存は避けたい と、これは素朴すぎるような気もしますが、しかし諦めきれない感情があります。

フロムが『愛するということ』[4] で記述したような、「愛」がどこまで実現可能なのか、私にはまだよくわからずにいます。

恋愛に見られる排他性は、しばしば所有欲にもとづく執着だと誤解されている。「愛しあっている」ふたりが他の人には目もくれないということはよくある。じつは彼らの愛は利己主義が二倍になったものにすぎない。ふたりはたがいに相手に自分を同一化し、ひとりをふたりに増やすことで孤立の問題を解決しようとする。

共棲的結合とはおよそ対照的に、成熟した愛は、自分の全体性と個性を保ったままでの結合である。

そもそも、また、恋愛というフレームワークがよくわかっていないということもあります。

本当に好きな人は、恋人とかではなく友人にしたくなりません??

再び、『思わず考えちゃう』(pp.80-81) から。

とても気に入って、大好きになっちゃって、よごれるのがイヤで一度も使えなかった、そんなものたち
大事すぎると身近にいられないというか、一緒にいられないみたいなところがありませんか。

その人に好かれすぎたりすると、その人とは近づけないっていうか、それはそれで大事にされてるんだけど、なんだか不幸だなって思いました。

#学び

今年はあまり密度が高い年とはいえませんでしたが、それでも学びはありました。以下に列挙します。

  • 文通は素晴らしい(友人とやっています。超楽しい。)
  • 自分は、 「やらねばなと思いながらできていない」 という状態で消耗することが結構ある
    • 実行機能の問題ともいえる。
    • 「夜になって、急速に体がそわそわして、泳ぎに行った。」とかいう日記が散見される。
  • 「作り切る」のがうまくない
    • 飽きとの戦い
  • 日記を見ると、 3ヶ月に一回は抑うつ感情の話をしている
    • 感情の波に生産高が振り回されすぎている
  • キャリアには、他人がやりたいことをやる(ことでお金をもらい、教育される)フェーズと、自分がやりたいことをやる(から儲かるかは分からんけど、幸福な)フェーズがある。
  • 人生、5ヶ年計画が重要. 生活とビジョンをalignさせること.
  • 研究が進んでいるのは、暇な時.(8月とか、12月のテスト後[5] とか) やっぱり授業入れすぎた.

#2026年について

2026年は、とにかく卒業をしたいと思っています。
そのうえで、東京の某社でソフトウェアエンジニアとして就職が決まっているので、そちらで働き始めることになります。

会社は、基本的にはお金を稼ぎながら社会人をインストールする場として使おうと思っているので、
人生の本体は会社の外にあるというスタンスです。(内定前からそれを宣言していた)

来年のテーマは、「自分の人生に真剣になること」.

学生時代は、オンとオフがうまく切り替わらず、また 自分の中長期的なビジョンと取り組みをうまく一致させる事ができなかった 点を反省しています。

結局のところ、 そのせいで取り組みが発散して「積み上げ」ができず、目的意識が曖昧なまま感情的にも不安定になりがちだった。

環境の変化を機に、再び自分の長期的なビジョン(おもしろ工作おじさん)と、 自分の根源的な欲求 に向き合い、それを実現するための生活となるよう、一貫性を作り上げることが重要だと考えています。

その意味で、自分の人生の時間を、自分が好きなようにカスタマイズできないはずはないので、人生に真剣に、頑張ろうと思っています。

#補遺

*本当は、今年はきっと振り返り記事なんて書けなくて、元気がないまま年を越すんだろうなと思っていました。

でも、こうして何かを出力できているのは、昨日・今日とSGGのイベントに参加して、
自我を取り戻すぞという覚悟ができたからだと思います。 本当にありがとう。*


  1. 鴻上尚史, 2011. 書誌情報 ↩︎

  2. ヨシタケシンスケ 2019. 書誌情報 ↩︎

  3. 芥川龍之介 1915, 恒藤恭への書簡. 『旧友芥川竜之介』より書誌情報 全文(NDLデジタルコレクション) ↩︎

  4. エーリッヒ・フロム 1991. 書誌情報 ↩︎

  5. これは薬の影響もあるけど ↩︎


IMEの辞書フォーマットの互換性について調べる

現在、日本語ではいくつかの異なるIMEが利用されています。[1]
主要なIMEには、いずれも独自のかな漢字変換を登録できる「ユーザ定義辞書」(名称は様々)機能があり、辞書のインポート/エクスポートが可能です。

そのため、複数人/複数デバイスで辞書を共有したり、IMEを乗り換える際に辞書データを引き継いだりすることができます。
しかしながら、各IMEは独自の辞書フォーマットを持っており、 複数のIME間で辞書資源を再利用するのは一筋縄では行きません

しかも、 MS/Googleの2大主要IMEがファイルの正確な仕様を整理された一次情報の形で公開していない雰囲気でした。(あまりよく調べていないので、あったら教えてください。)

この記事では、主要なIMEの辞書フォーマットについて調査し、どのフォーマットが他のIMEで使用できるかをまとめます。

ここでは、主要なIMEとして、以下を対象とします。

ちなみに、MacOSでは日本語IMとは別にText Replacement機能でも辞書登録が可能です。こちらはplist形式で保存されており、また話が変わってくるので割愛。

これとは別に、SKKの事情も調べたかったのだけれど、闇が深いようでよくわからない ので 今回は見送り

卒業研究の中間報告の提出期限が迫るなか、どうしても個人的な興味で調べたくなったところで調査したものなので、あまり筋の良い出典に当たれていない点はご容赦ください……(よくわからない個人ブログに基づく情報が多分に含まれます)

#結論

↓ FROM TO → MS Google ATOK macOS
Microsoft 日本語IME
Google日本語入力 ⚠️
ATOK
macOS 日本語IM (or ことえり)

#詳細な仕様

#Microsoft 日本語IME

1次情報がよくわからなかったのだけれど、こういう記事を見つけた。

  • デフォルトの拡張子は .txt
  • フォーマットはタブ区切りテキスト

形式:

かな    変換後    品詞    コメント

品詞は、以下があるようです。比較的fine-grained。

Microsoft 日本語IMEの品詞一覧
  • あわ行五段
  • か行五段
  • さ行五段
  • た行五段
  • な行五段
  • ま行五段
  • ら行五段
  • が行五段
  • ば行五段
  • さ変動詞
  • ざ変動詞
  • 一段動詞
  • 形容詞
  • 形容詞ガル
  • 形容詞ュウ
  • 形容動詞
  • 形容動詞ノ
  • 形容動詞タル
  • さ変名詞
  • さ変名詞非接尾
  • ざ変名詞
  • 名詞
  • 名詞非接尾
  • 数量
  • 数詞
  • 支庁
  • 地名その他
  • 社名
  • 固有名詞
  • 副詞
  • 感動詞
  • 接続詞
  • 連体詞
  • 慣用句
  • 単漢字
  • 接頭語
  • 冠数詞
  • 接尾語
  • 助数詞

#Google日本語入力

こちらもよくわからないのだけれど、こんな記事 を見かけた。

それから、OSS版であるところのMozcユーザ定義辞書インポート部分を読むと、まあまあ分かる。

  • デフォルトの拡張子は .txt
  • フォーマットはタブ区切りテキスト
  • 文字コードはUTF-8 BOMなし

形式:

かな    変換後    品詞  コメント

品詞の一覧は、以下らしい

Google日本語入力の品詞一覧
  • 名詞
  • 短縮よみ
  • 候補のみ
  • 固有名詞
  • 人名
  • 組織名
  • 地名
  • 名詞サ変
  • 名詞形動
  • 数字
  • アルファベット
  • 記号
  • 顔文字
  • 副詞
  • 連体詞
  • 接続詞
  • 感動詞
  • 接頭辞
  • 助数詞
  • 接尾一般
  • 接尾人名
  • 接尾地名
  • 動詞ワ行五段
  • 動詞カ行五段
  • 動詞サ行五段
  • 動詞タ行五段
  • 動詞ナ行五段
  • 動詞マ行五段
  • 動詞ラ行五段
  • 動詞ガ行五段
  • 動詞バ行五段
  • 動詞ハ行五段
  • 動詞一般
  • 動詞カ変
  • 動詞サ変
  • 動詞ザ変
  • 動詞ラ変
  • 形容詞
  • 終助詞
  • 句読点
  • 独立語
  • 抑制単語

#ATOK

ATOKの辞書フォーマットは、公式ドキュメントがわかりやすいです。

  • デフォルトの拡張子は .txt
  • フォーマットはタブ区切りテキスト
  • 文字コードはShift_JISが標準, オプションでUnicode(UTF-8?)も可[2]

形式1(必須項目のみ):

かな    変換後    品詞

形式2(オプション項目を含む):

かな    変換後    品詞    コメント  自動置換する/しない 置換候補1 置換候補2 ... 置換候補5

非常に整った品詞の一覧があります。
また、()内に示した番号でも指定できるのが特徴的です。

ATOKの品詞一覧
  • 固有組織(6)
  • 固有商品(7)
  • 固有一般(8)
  • 名詞サ変(9)
  • 名詞ザ変(10)
  • 名詞形動(11)
  • 名サ形動(12)
  • 形容詞(37)
  • 形容詞ウ(38)
  • 形容詞イ(68)
  • 形容詞エ(69)
  • 形容動詞(39)
  • 形動タリ(40)
  • カ行五段(23)
  • ガ行五段(24)
  • サ行五段(25)
  • タ行五段(26)
  • ナ行五段(27)
  • バ行五段(28)
  • マ行五段(29)
  • ラ行五段(30)
  • ワ行五段(31)
  • ハ行四段(32)
  • 一段動詞(33)
  • カ変動詞(34)
  • サ変動詞(35)
  • ザ変動詞(36)
  • ワ行五段音便(43)
  • カ行五段特殊(72)
  • ラ行五段特殊(73)
  • ワ行五段特殊(71)
  • ナ変動詞(44)
  • ラ変動詞(45)
  • カ行上二段(46)
  • ガ行上二段(47)
  • タ行上二段(48)
  • ダ行上二段(49)
  • ハ行上二段(50)
  • バ行上二段(51)
  • マ行上二段(52)
  • ヤ行上二段(53)
  • ラ行上二段(54)
  • カ行下二段(55)
  • ガ行下二段(56)
  • サ行下二段(57)
  • ザ行下二段(58)
  • タ行下二段(59)
  • ダ行下二段(60)
  • ナ行下二段(61)
  • ハ行下二段(62)
  • バ行下二段(63)
  • マ行下二段(64)
  • ヤ行下二段(65)
  • ラ行下二段(66)
  • ワ行下二段(67)
  • 顔文字(70)
  • 短縮読み(74)
  • 数詞(13)
  • 副詞(14)
  • 連体詞(15)
  • 接続詞(16)
  • 感動詞(17)
  • 独立語(18)
  • 接頭語(19)
  • 冠数詞(20)
  • 接尾語(21)
  • 助数詞(22)
  • 単漢字(41)
  • 終助詞(42)

#macOS 日本語IM

公式ドキュメント があります。さすがApple。

  • テキストファイル
  • ASCIIカンマ区切り

形式1(コメントなし):

かな,変換後,品詞

形式2(コメントあり):
コメントの前のカンマが2つ連続である点が特徴的。

かな,変換後,品詞,,コメント

品詞の一覧も公式ドキュメントにあります。かなり貧困。

macOS 日本語IMの品詞一覧
  • 普通名詞
  • サ変名詞
  • 人名
  • 地名
  • 形容詞
  • 副詞
  • 接尾語
  • 動詞
  • その他すべての品詞

  1. ちなみに、正確にはIMEという用語をここで用いているように「かな漢字変換」の意味で用いるのは誤用である。 ↩︎

  2. Unicodeオプションがあることは分かったのですが、どのUnicodeなのか、正確なところが調べられませんでした。ご存知の方教えてください。 ↩︎


LPC810の書き込み&プログラム開発に関する備忘録

部品箱から、大昔に買ったLPC810がたくさん出てきた。

LPC810というのは、「8ピンARM」などと称していっとき話題になった、
NXPのARMマイコンで、多分流行った頃に買ったのだと思う。

8ピンの小さなパッケージにもかかわらず、ARM Cortex-M0コアを搭載した32bitマイコンであるということで話題になったものと思われる。当時はmbedも全盛期だったはずで、mbedのオンラインコンパイラを使った開発例もしばしば見かけた。

今となってはもっと良いマイコンがあるので積極的に設計に採用しようとは思わないものの、この在庫分に関しては、せっかくなのでなんとか料理してやりたい。
しかしながら、電子工作界隈でのLPC810に関する記事は流行当時のものばかりで、そもそも2025年にはどうすればプログラムがビルドできるのかすらよくわからなかった。

そんなわけで、何とか調べてLチカまではできるようになったので、その備忘録を残しておく。

#方針

普通のARMマイコンなので、究極的にはARMのコンパイラを持ってきて、データシートを読みながらリンカスクリプトを書いてビルドしてやればいいのだろうが、流石に面倒なので、できるだけ高級な(と言ってもプログラムメモリが貧弱なのでそこまで強力な抽象化ができるわけではないのだが)ツールを使おうとしてみる。

#プログラムのビルド

流行当時の記事をみると、mbedのオンラインコンパイラを使っている例と、LPCXpressoを使っている例がある。

mbedのオンラインコンパイラは、mbedのサービスが終了してしまったので使えない。その後の後継サービスもあるようだけれど、そもそもプログラムメモリが大きくはないので、mbedを使うくらいならもう少し薄い環境でやりたい。(RoboCup Juniorをやっている時にmbed 5を使っていたが、あれは結構デカい)

そういうわけなので、LPCXpressoを使ってみる方法で行くことにする。
しかし、実はLPCXpressoもソフトウェアとしてはdeprecatedらしい[1]

そういうわけで、その後継のMCUXpressoを使ってみることにする。

#MCUXpressoのインストール

無料。やるだけだった。MCUXpressoのダウンロードページからダウンロードして、インストールするだけ。 STとかだとこういうツールがWindowsだけというのはありがちだが、Macでも普通に使えた。

#プロジェクトの作成

  1. MCUXpressoを起動して、新規プロジェクトを作成する。
  • [File] → [New] → [Create a new C/C++ project]
  • Preinstalled MCUsからLPC810を選択。
  • ボードは選択せずにNext
  1. ウィザードの選択
  • “C++ Project” を選択してNext.[2]
  • "LPCOpen"とかいうウィザード群もあって、こっちの方が新しいらしいのだけれど、私の手元では上手くいかなかったので、一旦LPC810向けのLPCOpenライブラリはなさそうなので、LPCOpenではない方(CMSISというライブラリ群らしい)を選択する
  1. プロジェクト名の設定
  • ここではLチカなので"blink"にしておきました
  1. ライブラリの設定

CMSISライブラリを選択する。たぶんここでハードウェアごとの設定を指定するようになっているのだろうと思われる。
私はNXPのマイコンはマジで初心者なので、合ってるかわからん。
MCUとしてLPC810を選択していれば、それぞれ一択になるはずなので、選択できるものを選択する。

  1. DSPライブラリの設定

DSP(Digital Signal Processing / ディジタル信号処理)に使う高級な関数群を使うかどうかの設定。
基本は使わないのでいいはず。デカいので、不要なら無視してNextでいいはず。
高速フーリエ変換とか使いたい場合は使うといいのかもしれないが、使ったことないのでわからん。

  1. MTBの設定

Micro Trace Bufferを使うか、使う場合はどのくらいの容量を割くかの設定ができる。
こんなことをしているとメモリがすぐに足りなくなるので、使わない。

  1. CRPの設定, C++の設定

MTB同様、無視していく。

  1. プロジェクトの作成
    Finish.10秒くらいかかった。

  2. post-build stepsの設定
    このままでもビルドはできるのだけれど、これだとaxfファイルしか生成されないので、binファイルを生成するように設定する。
    [Project]→[Properties]→C/C++ Build → Settings → Build Steps の中にある、Post-build stepsに、コメントアウトされた部分があるので、アンコメントしておく。

#プログラムの実装

今回はポート2(4番ピン)でLチカする。
blink.cppを以下のように書き換えた。

#ifdef __USE_CMSIS
#include "LPC8xx.h"
#endif
#include <cr_section_macros.h>

#include "lpc8xx_clkconfig.h"
#include "lpc8xx_gpio.h"

volatile uint32_t msTicks = 0;
volatile uint32_t power=0;


void SysTick_Handler(void) {
	msTicks++;
}
void systick_delay (uint32_t delayTicks) {
	uint32_t currentTicks = msTicks;
	while ((msTicks - currentTicks) < delayTicks);
}

#define LED_PIN 2

int main(void) {

    // Clock configuration
	SystemCoreClockUpdate();
	SysTick_Config(SystemCoreClock / 1000);

	LPC_SYSCON->SYSAHBCLKCTRL|=(1<<6); // Provide clock to switch matrix
	LPC_SWM->PINENABLE0|=(1<<3); // Enable fixed pin function PIO0_2
	LPC_GPIO_PORT->DIR0 |= (1 << LED_PIN); // Set LED_PIN as output

	while(1) {
		uint32_t current = msTicks;
		LPC_GPIO_PORT->NOT0|= (1 << LED_PIN); // flip LED
		while(msTicks<current+1000){ // wait 1s
			asm volatile ("nop"::);
		}
	}
	return 0; // unreachable
}

#ビルド

上のハンマーのボタンか、Cmd+Bでビルドできる。

#書き込み

書き込みには、USB-シリアル変換回路を使う。
以下のような回路が必要。

私は、LPC810書き込み装置 | 電脳伝説を参考にして、以下のようなボードを組んだ。

実験する分にはブレッドボードに直に組んでしまえばよいと思う。

回路ができたら、書き込みにはlpc21ispを使う。

Windows向けにはFlash Magicなどのより高級なツールもあるらしいが、Macで使えるのはこれが一番安定している感じがする。
先ほどビルドしたプログラムは、プロジェクトディレクトリ下のDebug/blink.binにビルドされているので、これを使って書き込む。
(リリースビルドだとRelease/blink.binになる)

ISPボタン(SW2)を押しながらリセットボタン(SW1)を押すことで書き込みモードに入る。

lpc21isp -bin blink.bin -control /dev/tty.usbserial-0001 115200 12000
  • /dev/tty.usbserial-0001は、自分の環境に合わせて変更すること。
  • 115200はボーレート、12000はマイコン側のクロック周波数。

書き込みが成功すると、自動でリセットされ、LEDが1秒おきに点滅するはず。

#おわりに

LPCOpenを使いたい。
ってかRustで書きたい。


  1. Wayback machine ↩︎

  2. C Projectでもいいと思うけど、C++が使えるならそのほうが嬉しいからね。Rustも使えたりしないかなぁと思うけど、プログラムサイズがどうなるかが課題と思う。 ↩︎


電子部品の「受動部品」と「能動部品」(MECEじゃない)

電子部品を大きく二分するカテゴリとして、「能動部品」と「受動部品」がある。

よく見られる範囲[1] [2] [3]では、以下のようにカテゴリ分けされる。

#能動部品の例

  • トランジスタ(含 FET)
  • ダイオード
  • IC類

#受動部品の例

  • コイル
  • 抵抗器
  • コンデンサ

#定義

上で挙げた参考ページの趣旨をまとめると、能動部品と受動部品は、それぞれ以下のように定義されるようである。

  • 受動部品:外部から供給されたエネルギーを消費・蓄積・放出する部品
  • 能動部品:外部から供給されたエネルギ-を増幅・整流する部品

…… MECEでない!!

おれは、おこっています。

ICもエネルギーは消費するよ!!!

そんなわけで、おれにはこの分類の意味がよくわからないと思った。

単に回路の基本要素であるLCRとそれ以外を分けたいだけのような気もするし、それならLCRと呼べばよい。

確かに回路設計の際に「このICを使って……」から考えはじめることはあっても、「この抵抗を使って……」から考え始めることはまずないだろうから、
その意味で気持ち的な意味はわかるのだけれど、それ以上に意味のある用語とはとても思えず、
この分類がしばしば電子工作の本のはじめに出てくるのも、甚だ無意味でないかと思う。

そう思ったよ、という記事でした。


  1. 新人エンジニアの赤面ブログ 『受動部品・能動部品とは!それぞれの違いについて!』 - 半導体事業 - マクニカ ↩︎

  2. 能動部品と受動部品 - パナソニック ↩︎

  3. 『受動部品』と『能動部品』の違いと一覧! - Electrical Information ↩︎


KiCadのSPICEシミュレーションに入門してみた備忘録

もうKiCadを使ってずいぶん経つのだけれど、実はシミュレータを使ったことがなかった。
わけあって使いたくなったので、入門してみることにした。

最終的には、以下のようななんの変哲もないコレクタ接地回路の過渡応答のシミュレーションができた。

基本的には、KiCad7のSpice機能で回路シミュレーションを行う - おながわの日記 (以下、この記事を 元ネタ と呼びます)に従って、やってみただけ。

#使ったもの

元ネタ ではKiCad7の話をしているが、KiCad8が手元にあるので、それを使った。

元ネタの内容から特に変化はないが、ややUIに差分があったので、適宜補足していく。[1]

  • Macbook Pro 2021 (M1 Pro, 11 Core, 32GB RAM)
  • KiCad8.0.3

#回路図の作成

マジで、やるだけ。

  • 元ネタ と基本的な回路定数は同じ。
  • NPNトランジスタのシンボルはKiCadに同梱のSimulation_SPICEライブラリにあるNPNを使う
  • 左上にある信号源(V1), 電源(V2)は、それぞれ VSIN, VDC である。これも 元ネタ と同じ。

元ネタ では、V1の設定の画面しか拡大されたscreenshotが出ていなくて、V2の設定をはっきりとは書いていないのだけれど、
回路図を見れば9Vであることがわかる。 そのように設定する。 (デフォルトでは1Vなので、波形がクリップする)

#SPICEモデルの追加

NPNトランジスタQ1の特性を設定する。
元ネタ 同様に、RohmのBC847BのSPICEモデルを使う。
直接のリンクは 元ネタ では示されていないのだけれど、BC847B - データシートと製品詳細 | ローム株式会社 - ROHM Semiconductor からモデルはダウンロードできる。

ダウンロードしたら、解凍して、Q1のプロパティ→"Simulation Model…"→ “SPICE model from file (*.lib, *.sub, or *.ibs)” からダウンロードした bc847b.lib を選択する。

#シミュレーションの設定

やるだけ。
元ネタ では「コマンド」を設定せよと書いてあるが、KiCad8では"New Analysis Tab…"という正弦波に+記号が重なったようなボタン(またはショートカットキー ⌘ + N) から設定できる模様。

値を設定したら、“OK” を押して設定完了。
上の再生ボタン的なやつまたはショートカットキー “R” でシミュレーションが実行される。

それから、右側の"Signal" の表から “V(OUTPUT)” と “V(INPUT)” を選択して、プロットさせると、以下のようなグラフが得られる。

シミュレーションはこれで完了。

これでちょっとした回路設計とか、回路の勉強が捗るといい。


  1. ところでKiCad9がこの記事の4日前にリリースされていてこの記事はすでにやや古い。 ↩︎


FPCのブレークアウトボードのカバー

WaveshareのE-Inkディスプレイ で遊んでいて、
しばらくは専用のHATを使っていたのだが、直接触ってみるためにFPCのブレークアウトボードをAmazonで買った。

実験に使っているデスクがスチールデスクで、塗装されているので絶縁されているとは思うのだけれど、
裏面で短絡したりすると怖いので、カバーを作ってみた。

せっかくなのでデータ公開。

組み立てにはM3のビス2本が必要。

ダウンロード(STL)


デザインスケッチの勉強に使った本とか

昨夜、高校時代のチームメイトであるTomixが以下のようなtweetをしているのを見かけました。

本人に聞いたわけではないので、彼のツイートの真意は不明なのです。が、私はこれをみて、私自身がこの夏スケッチの勉強を少ししていたことを思い出しました。

だからといって特別上手くなったわけではないのですが、良い勉強でした。

そういうわけで、彼に頼まれたとかでは全くないのですが、当時利用したいくつかの資料をまとめておくことで先人たちから受けた恩を送ることにします。

なお、本稿では「スケッチ」の語をもっぱら物理的な製品の核心的なアイデアを記録、伝達したり、意匠を検討するためのメディアとして描画されるものの意味で使います。
より広範な絵画のクラスとしてのスケッチにも学ぶべき点は多い[1] が、本稿の主な対象ではないのでご留意を。

#きっかけ

私がスケッチの学習に手をつけようと思ったのは、今年の夏、UC BerkeleyのSummer Sessionに行った ことがきっかけです。

この中で、Prototyping and Fabrication(DESINV22) という授業を受講しました。

授業は、こんな感じ。(1単語分だけ私も出演している。)

授業では、3D プリンタやレーザー加工機などのおなじみのデジタルファブリケーションの技術の基礎から、それを使ったRapid prorotypingに基づくデザインのプロセスを取り扱いました。
その中で、Chris Myers先生(めちゃくちゃ褒め上手。“Good design is less design” と “Iterations!!” が口癖)が、スケッチをして見せてくれたり、スケッチの描き方についてちょっとしたワークショップをしてくれたりしました。

そこで勉強を進めるうちに、「スケッチはおもしろ工作おじを目指す上での基本スキルだろうな」と思ったので、今のうちに身につけておこうと、勉強してみることにしました。

#リソース色々

在米中は主に先生に色々聞いていたのだけれど、帰国後は本を読んでみることが学習法のほとんどの部分を占めました。
先生に聞いた部分はあまり再現性がないので割愛して、読んだ本(+動画)を紹介します。

#『プロダクトデザインのためのスケッチワーク』

Amazon

ケーススタディが充実していたのが良かったです。
遠近法や投資図法などのパースの取り方が主な話題でした。

絵を描くのが好きだけど得意というほどでもない私が、基本的語彙や前提となる知識を整えるのにはちょうど良かったです。
デザインという領域は芸術領域から工学領域にかけて広がる広範な概念ですが、工学畑出身の人間に特にお勧め。

#『プロダクトデザインスケッチ : デザインの発想から表現』

Amazon

こちらは、表紙にあるような色彩に富んだスケッチにまつわる話題が多かった印象です。
陰影の入れ方とかがよく説明されていたので、レンダリングを作る時には参考になるかも。逆に、その場でザクザク描いていくようなスケッチに関する話題は少なかった印象です。

#『スコット・ロバートソンのHOW TO DRAW : オブジェクトに構造を与え、実現可能なモデルとして描く方法』

書誌情報(国立国会図書館には書影がないらしい)
Amazon

これは、かなり汎用的なスケッチの本です。地力がつく感じ。パースの勉強をするには一番役に立った気がしますが、ちゃんと分厚いので、完走はしてません。
中で出てくるエクササイズはかなり有用なのですが、個々のエクササイズが無限に凝れてしまうので、どこで次に進めるかが難しかった印象です。

#『気になるモノを描いて楽しむ 観察スケッチ』

これは、描き方というよりは、スケッチする上でどんな部分に注目するかの点で参考になりました。
絵だけ眺めていても面白いので、パラパラとめくっていけるのも良い。

#『だれでもデザイン』

Amazon

日本のデザインイノベーション界隈では大・著名人であるところの山中先生の本です。
この本はスケッチの勉強をしようとはとは無関係に読んだのですが、スケッチの話が出てきます。

山中先生といえば、今年開催されていた「未来のかけら」展はすばらしかったです。

その中でも、デザインスケッチに関するワークショップをされていたようで[2]ていねいなレポート を書かれている方がいらっしゃいます。

それから、TEDxでの以下の講演も、その場で描いている臨場感が伝わって刺激的で、モチベーションが上がりました。

山中先生のスケッチの話題は、スケッチを単に伝達のためのレンダリングに留めず、描く人本人の思考の場としても捉えている点が一貫していて素敵です。
Berkeleyで学んだときもやはり思考の場としてのスケッチの使い方を学んで感銘を受けたので、どうも私はこのスタイルが好きなようです。

Instagramにもたくさんのスケッチが上がっているので、楽しい。

#気になってるけどまだ読んでない本

#Sketching: Drawing Techniques for Product Designers

Amazon

なんかいい噂をたまに聞きます。(読んでないからそれ以外に言うことながない)
カーリルの情報ではつくば周辺には蔵書がなさそうなので、どこかに行った時に探してみます。

#自動車とプロダクトデザインの基本と応用 : DESIGN & SKETCH : プロダクトデザイナーになるためにスケッチから始める実践的方法 新装版

Amazon

なんかこの記事を書いていて、そういえばちゃんとNDLで検索はしてなかったなと思った[3] ので、検索してみたら出てきました。
なんか良さそうですね。(読んでないからそれ以外に言うことながない)

#まとめ

この手の記事は実は世界初ではなくて、例えばこれとかもそれ系の記事です。
他にもいくつかあるので、興味があれば探してみてください。

他にもいろんな本やWebサイトを見たり読んだりした気がするのですが、今覚えているのはこの程度なので、思い出したら追記します。


  1. 画材や、パースのとり方など ↩︎

  2. 私は米国にいたので参加できず…… ↩︎

  3. 筑波大生なので、普段は筑波大が誇るディスカバリサービスであるところのTulipsをよく使います。 ↩︎


Xを演じている

絶望している。
先日、ある血縁関係にある人間 [1]から「blog見ているよ」と言われた。

正直なところ、本人が「見ている」と主張する私のblogなるものが、本当に正しくここであるかは怪しい [2] ものの、本人が私をインターネットで探しているという事実だけで吐き気がする。

この問題は、俗に「身バレ」と呼ばれるものだと思うのだけれど、私に関して言えば本名でやっている以上身バレなどと烏滸がましいことをいうつもりはない。

しかし、だからこそ、インターネットには入ってきて欲しくなかったのだ。

私は家族の前では ゆうせい を演じているし、インターネット[3] や友人たちの前では yuseiito を演じている。それらは相互に関連しあっているし、多くを共有しているが、しかしそれぞれにそれぞれの優先順位があり、敵がいて、味方がいる。

ここに文章を書いているのは、 yuseiito であって、ゆうせいではないので、それを一方的に接続されると、読んでいる君にも有害な結果にしか繋がらない。

もう本人は気づいているものと期待して、ここに警告する。読むな。これはあなたのための文章ではない。

より理性的に言えば、インターネットは公共空間であるから、読むのは君の自由であるが、それを読んであなたがどのような心境になろうと、私はその説明責任を負わない。これは私の表現の自由の範疇の問題である。

私は〈私〉という〈個人〉として、いま自由に生きている。干渉してくれるな。


  1. 名誉のために言うと、親ではない。 ↩︎

  2. 本人のインターネットぢからを信用していない。 ↩︎

  3. ここまで頻繁にインターネットと書いてから、これは本来Webという語を使うべきだったと反省している。インターネットとWebは区別しような。もう直すのも面倒なのでこのままいく。 ↩︎


人称代名詞としての「人間」

blogを書きたい気分なので、書く。

といっても、米国の紀行録以外に特段書きたいことがなく、かつそれはあまりにも多くの労力が必要なので、
先日人に言われて気づいたことについて書く。

私は、しばしば三人称代名詞として「人間」ないし「ヒト」「ホモサピ」を使う。

例えば、「XXXはYYな人間である」だとか「人間に会いたい」、「XXな人間がいた」「私はfoobarなホモサピです」のように。

もっとも、身体がパソコンでできているような人々の仲間内では、こういった語用は当然のものとして流通しているので、普段意識する機会はない。

しかし、どうやらこれは一般的な語用ではないようで、しばしば違和感を持った人間が驚いたような反応をする。

実のところ、このある種の 逸脱 は、50%無意識で、50%意識的である。
50%の無意識は、世界のあらゆるagentを計算機かそれ以外かで認識していて、その点で計算機以外をホモサピと呼んでいるだけという話で、私にとってホモサピに見えたものがホモサピであるという、 きわめて素直な 語用である。

他方、意識的に、そのように言葉を選んでいる面というのもあって、これが重要である。

「ホモサピ」とか「ヒト」とか「人間」という言い方の代替案を日本語で考えてみる。
すると、実はこれが案外難しく、極めてニュートラルな(すなわち、先輩、後輩、恋人、友人、同僚、家族 etc…のような、「ヒトである」以外の追加の情報を相手に与えない)人称代名詞というものが見当たらないのである。

たとえば、「彼は〜な先輩です」のような言い方では、続柄を示してしまっているし、「〜な男だ」のような言い方では「男である」という余分な属性を提示していて、好まない。

続柄は話題に余分なcontextを加えるし、性別を使った人称代名詞も、本人に尋ねるまで不明確であることはいうまでもない。[1]

唯一使えるとしたら「人」(ひと)なのだけれど、おれは自分も他人もどのくらい「ひと」なのかに自信がない。homo sapiensだけれど、ひとである感覚がないヒトというのは、案外いるものだ。

そんなわけで、ひとまずは種としてのhomo sapiensと、その言い換えをなるべく使おうと思っている。

と言いつつ、なんとなく流れで「人」(ひと)を使うことも多いので、自己矛盾、単なる逆張りでは?と言われると、そうかも?とも思うが、それはそれでいいじゃないか。

言葉遊びは、楽しい。


  1. そして、私はその必要に迫られない限り人に本人の性自認は尋ねない。余分なcontextだから。 ↩︎


【平歯車・板歯車・内歯車】Fusion360でギヤを作る備忘録

Fusin360でいろんな種類のギヤが組み合わさった構造[1]を作ったので、作り方の備忘録。

3Dプリントするにしても、レーザーカットするにしても、Fusionは便利でいい。

筆者は機械工学に関する専門的教育を受けておらず、独学と模索をまとめています。趣味の工作やプロトタイプには十分な内容と考えていますが、プロとしての品質が要求される目的では参考にしないでください。

#平歯車

インボリュート曲線は大変なので、辛いかと思いきや、一番簡単。
標準で含まれているSpurGearアドインを使う。

Utilities > ADD-INS > SampleScripts を実行する。 (PythonのバージョンとC++のバージョンがあるっぽい。どちらも動く)

#板歯車

いわゆるラック. (rack) 歯は台形でよいので、モジュールを決めてしまえばほぼ自動的に決まる。

形状は以下を参考にして、歯を一つ作ったあと、繰り返し配置して好きな長さに伸ばす。

最後にギヤの厚さでExtrudeして終了。

#内歯車

正しい内歯車の作り方 - 歯車のハナシ が参考になる。

前述の方法で平歯車を作ってから、それをPress/Pullで内歯車の歯形になるよう変形して、それを鋳型のように使って補集合をとることで得られる。
変形は、歯元のたけを0.25モジュール小さく(するために円の方を0.25モジュールのばす)するのと、歯先を0.25モジュール伸ばす2つ。


  1. Passive offset adjusting wheel mechanism (Kanako Hodo, Yasuyuki Yamada 2022) にある車輪を作りたかった。 ↩︎